鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

夏のコイワシ

★瀬戸内の初夏の肴小イワシの刺身。シゴがめんどくさいけど、手間暇かける甲斐がある。 水分を抜いているとこ。 松本昭司への連絡はこちら shouji108jp@gmail.com

ホンマグロ豊漁 TACが功を奏す

www.youtube.com TAC(漁獲可能量)の設定は有効だった番組内で組合長が口にしたTACという言葉。これはノルウェーなどの漁業先進国で早くから導入され、漁獲量の増加に貢献。日本の水産資源が衰退した原因として、このTACの導入が遅れたことが指摘されてきた…

連載「ゆうたの夏」第20話「航太の父の船で本土へ 霧に巻き込まれる」

第20話「航太の父の船で本土へ 霧に巻き込まれる」「なあ、明日さ、とうちゃんが本土へ海産物を卸しに行くんだ。一緒に行かないかって?」 航太の突然の提案に、ゆうたもさくらも目を輝かせた。「行く!」「行きたい!」二人の声が重なる。本土の街への期待…

魚は痛みを感じるか

興味深いテーマです。科学者たちの研究によれば、「魚も痛みを感じる」という見解が今では主流となっているようです。 個人的には、以前まで「痛みは感じないのでは」と思っていました。たとえば生け簀の中に、売り物の鯛と一緒に入れてはいけない魚がいます…

連載「ゆうたの夏」 第19話「お盆も近い干物づくりのある日」

連載「ゆうたの夏」第19話「お盆も近い干物づくりのある日」 朝のラジオ体操が終わると、ゆうた、航太、さくらは港へと足を急がせた。 目的は、航太の父が網でとってきた魚をもって干物づくりのために航太の家に運ぶこと。 「よう来たねー」と、日焼けした顔…

連載「ゆうたの夏」 第18話「猛烈な台風が島を直撃」

連載「ゆうたの夏」第18話「猛烈な台風が島を直撃」 朝、目を覚ますと、空は鼠色に濁っていた。風の音が少しずつ大きくなってきている。テレビでは「過去最大級の台風が接近中」と何度も繰り返していた。 「ゆうた、行くぞ」 祖父の声に急かされ、ゆうたは雨…

連載「ゆうたの夏」 第17話「夏祭り・ゆうたとさくらの心に芽生えた変化」

連載「ゆうたの夏」第17話「夏祭り・ゆうたとさくらの心に芽生えた変化」 夕暮れの潮風が島をやさしく撫でていた。神社の境内では、赤や黄色の提灯がゆらゆらと揺れ始め、ぼんやりとした明かりが夕闇に溶け込んでいく。潮の香りに混じって、焼きとうもろこし…

連載「ゆうたの夏」 第16話「肝試しの夜と古狸」

連載「ゆうたの夏」 第17話「肝試しの夜と古狸」 「ご飯食べたあと、肝試しに行かない?」 さくらが突然そう言い出した。航太が「また急なこと言うなあ」と笑ったが、ゆうたはすぐに「いいね!」と乗った。 「じゃあ、午後五時。神社の鳥居の前、集合ね」 日…

連載「ゆうたの夏」 第15話「再び秘密基地へ・洞窟は海賊のすみかだった」

連載「ゆうたの夏」第15話「再び秘密基地へ・洞窟は海賊のすみかだった」 朝の光がまだ涼しさを残している時間、ゆうたは航太とさくらと合流した。今日はあの洞窟に、もう一度行ってみようという話になっていた。 「父ちゃんに聞いたんだ」と、航太が自慢げ…

連載「ゆうたの夏」 第14話「航太とさくらの大げんか勃発」

連載「ゆうたの夏」第14話「航太とさくらの大げんか勃発」 さくらの家に向かったゆうたは、玄関の前でなにやら怒鳴り声を耳にした。 「なんでやってないのよ!宿題、昨日までにここまでって決めたじゃん!」 「うっせーな、知らねーよ!」 がらりと玄関を開…

連載「ゆうたの夏」 第13話「ゆうた、テンマ舟に挑戦」

連載「ゆうたの夏」第13話「ゆうた、テンマ舟に挑戦」 「テンマ舟、漕いでみたいって言ってたよな、ゆうた」 朝の港。潮の香りが風に乗って漂う中、航太がそう言って笑った。 「うん、やってみたい! 僕に漕げるかな?」 「当たり前だろ。さくらだって乗って…

連載「ゆうたの夏」 第12話「さくら、崖から転落」

連載「ゆうたの夏」 第12話「さくら、崖から転落」 「ねえ、あの山の上にある風車、見に行かない?」 朝の潮風が吹き抜ける中、さくらがふいに言った。 ゆうたと航太は顔を見合わせて、にっこりうなずく。 「ああ、あそこか。港からも見えるよね。行ってみよ…

連載「ゆうたの夏」 第11話「ハマチ大作戦」

連載「ゆうたの夏」第11話「ハマチ大作戦」 夜明け前—— 波の音がやさしく響く静けさの中で、ゆうたはふと目を覚ました。 「ゆうた、起きろー! 今日は大漁日和だよ!」 さくらが勢いよく蚊帳をめくった。島の空はまだ青白く、水平線がほのかに朱を帯び始めて…

連載「ゆうたの夏」 第10話「島の海水浴」

連載「ゆうたの夏」 第10話「島の海水浴」 「おッはよう、ゆうたー、航太ー。朝ごはんできたよー」 さくらの声が、蚊帳越しに響いた。島の朝は、セミのけたたましい鳴き声から始まる。 「うわっ、すごい音……」 「これが島の朝よ。夏の風物詩!」 さくらが笑…

連載「ゆうたの夏」 第9話「星空の下のバーベキュー」

連載「ゆうたの夏」第9話「星空の下のバーベキュー」 さくらの家の庭には、大きな木が一本立っていて、その下にテーブルと椅子が並べられていた。夕暮れの空にツバメが低く飛び交い、瀬戸内の夏の夕べが始まろうとしている。 「わぁ、いい匂い……!」 ゆうた…

連載「ゆうたの夏」 第8話「ゆうた磯釣りに初挑戦」

連載「ゆうたの夏」 第8話「ゆうた磯釣りに初挑戦」 (潮が満ちてきて洞窟に閉じ込められそうになった) 「昨日はほんと、焦ったよな」 航太が釣竿を肩にかけて岩場を歩きながら言った。潮の時間をしっかり調べた今日は晴天。波も穏やかで、海はまるで何事も…

連載「ゆうたの夏」第7話「海に消えた出口」

第7話 「海に消えた出口」「もうこんな時間か。潮が満ちてきとるな。帰るぞ」 航太の言葉に、ゆうたは洞窟の外へ向かって足を進めた。だが、さくらが立ち止まり、洞窟の入口を見つめて小さく声を漏らした。 「……え?」 ゆうたも顔を上げた。入口の岩の間から…

連載「ゆうたの夏」 第6話「洞窟の秘密基地」

連載「ゆうたの夏」 第6話「洞窟の秘密基地」 「こっちだ!ゆうた、遅れるなよ!」 先頭を走る航太の背中を追って、ゆうたは小道を駆けていた。さくらが時折振り返り、笑顔で励ましてくれる。 「大丈夫?転ばないでよー!」 島の北側、入り組んだ岩場を抜け…

長嶋茂雄さんの訃報

長嶋さんのご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。 野球オンチの僕でも、長嶋茂雄さんの名前くらいはもちろん知っています。昨夜からテレビもネットもニュース一色。時代をつくった偉大な方だったんだなあと、改めて感じました。 小学生のころ、クラスのほと…

連載「ゆうたの夏」 第5話「島っ子と冒険のはじまり」

連載「ゆうたの夏」 第5話「島っ子と冒険のはじまり」 ゆうたが島に来て数日が過ぎた。 祖父との漁、祖母との夕食、海と風の匂いに包まれた日々。けれど、まだどこかよそ者のような気がしていた。 そんなある日の午後、祖母に言われて近くの雑貨屋へ醤油を買…

「竹林の守人(もりびと)テル」 第15話(最終章) 竹の海、風の記憶

「竹林の守人(もりびと)テル」 第15話(最終章) 竹の海、風の記憶 ――風が、歌っていた。 それは、はるか昔からこの島に吹いていた、優しくも力強い、自然の調べだった。 そして今、その風は、少年ゆうの耳に、心に、確かに届いていた。 風の神子として目覚…

ゆうたの夏 第4話「瀬戸内の鯛の食卓」

ゆうたの夏 第4話「瀬戸内の鯛の食卓」 「ただいまー!」 港から戻ったゆうたの声に、祖母が笑顔で出迎えてくれた。台所のまな板の上には新鮮な野菜が並んでいる。 「まぁまぁ、ゆうた、立派な鯛じゃないの。すごいじゃない!」 「俺が釣ったんだよ。すごい…

「竹林の守人(もりびと)テル」 第14話「風を継ぐ者たち」

「竹林の守人(もりびと)テル」 第14話「風を継ぐ者たち」 風が海を撫で、空に雲を運んでゆく――。 ゆうたちが「竹の里」へと戻った日、島には静かで優しい風が吹いていた。竹林には新しい笹の葉が芽吹き、鳥たちはその上を舞い、春の訪れを告げていた。 「お…

連載「ゆうたの夏」 第3話「朝焼けの海へ」

連載「ゆうたの夏」 ゆうたの夏 第3話「朝焼けの海へ」 「ゆうた、起きるぞ。朝の海はもう始まっとる」 祖父の声が夢の中からゆうたを引き戻した。まだ空は暗く、カーテンの隙間からはかすかに藍色の光が差し込んでいた。 祖母がにぎったおにぎりを手に、ゆ…

「竹林の守人(もりびと)テル」 第13話「海ノ神楽(うみのかぐら)」

潮風が香る夜だった。 瀬戸内の海は、月の光を映して銀色に染まり、波は静かに砂浜を撫でていた。 ゆう、ナミ、テル、そしてアヤは、かつて風と火、水の記憶を繋いだすべての力が、最後にひとつに還る場所――**海ノ神座(かみのざ)**へとたどり着いた。 そこ…

新連載「ゆうたの夏」 第2話:はじめての島

新連載「ゆうたの夏」 第2話:はじめての島 フェリーが港に着くと、船体がゴトンと音を立てて岸壁に寄り添った。ゆうたはリュックを背負い直し、足元を確かめながらタラップを降りた。 「よく来たな、ゆうた!」 そう言って出迎えてくれたのは、日焼けした肌…

「竹林の守人(もりびと)テル」 第12話「暁の祈り」

「竹林の守人(もりびと)テル」 第12話「暁の祈り」 東の空が、ほのかに朱に染まり始めるころだった。ゆう、ナミ、テル、そしてアヤの四人は、竹林と炎の谷、水底の記憶を越えて――いま、最後の場所「暁の丘」にたどり着いていた。 そこは、瀬戸内の風と光が交…