すでに廃墟となったラブホテル。実は以前、この付近を通るときに車が急に動かなくなったことがある。まわりに人家はまったくない。ただラブホテルのネオンだけが場に不釣り合いな雰囲気を醸していた。まだガラケーの時代だったので検索も出来ないでいた。
ちょうどそのときタクシーがやってきた。
「すみません、車が故障してしまって」
「ちょうど目の前がホテルなので駐車場まで引っ張ってあげましょう。もう遅いから、明日の朝、レッカーを頼んだらどうですか!(^^)?」
運転手さんがケーブルを出し、車庫の前まで牽引をしてくださり、あとは押して車庫入れをした。深々とお礼をして、車庫の横のドアから部屋に入り、フロントに電話した。
「あの、ホテルの前で車がエンストしてしまって、一人ですが泊めてください」
「わかりました。2H3500円、お泊りは5500円」
「あの、ひとりなんですけど‥‥」
「いえ、一人でも二人でも料金は同じです。ところでお二人じゃなかったですか? お二人のようにみえましたけど」
「いえ、僕ひとりですよ。タクシーの運転手さんがいましたけど、すぐに帰りました」
「そうですか。女性の姿がみえたものですから。どうぞごゆっくりとお過ごしください」
さてと、これが最近のラブホというものか。ラブホは初めてではない。独身時代、男3人が連れだって長崎にドライブをした。五月連休だったため、どこもビジネスホテルは一杯。仕方なく男3人でラブホに泊ったことがある。それ以来だ。部屋のまわりは鏡で覆われ、ベッドはまるで宮殿のようなつくりである。疲れていたのでシャワーを浴びて眠りについた。
夜中にふと目が覚めた。ふふふふっと笑い声が聞こえる。あれ、テレビでも消し忘れたか…。夢か。ふたたび目をつむるとまた、ふふふふっと笑う。まわりを見渡しても誰もいない。
しばらくボーっとしていると、お腹のあたりがもそもそする。んッ? そーっと布団をめくると、女性がこちらをみて笑っているではないか。僕はびっくりしてベッドから飛び降りた。
あわててフロントに電話した
「部屋に誰かいます」
「エッ、だからお連れさんじゃないんですか?」