暮れになると思い出す。もう時効だと思うが、十年以上も前になるだろうか。親戚のジイさんが前立腺肥大で柳井の総合病院に入院した。手術後しばらくして外出許可をもらった。デオデオ(当時)の前をテクテク歩いているところに、対岸の地家室の同名のジイさんが運転中に見かけて声をかけた。
「どこへ行きよるんで」
「遠崎よ」
「ワシが乗せてったろう」
親戚のジイさんは買い物後、歩いてまた病院まで帰って行った。
担当医が尋ねた
「酒を呑んだでしょう」
「ありゃ、わかりましたか」
「酒を呑むと溶血作用で出血するんです」
内視鏡手術後、まだ傷も癒えていないのに酒を呑んだから血が止まらなくなったのだ。
「悪いことをするもんじゃないのう。バレてしもうたわい。ハッハッハ(^_^;)」
散歩だと嘘をついて酒を買いに行く方も行く方。入院中と知りながら酒屋へ連れて行く方も行く方。ご丁寧に同じ名前ときた。後日その話で、僕とジイさまの三人が呑みながら大笑いとなった。
うちの父も大正生まれだが、戦火をくぐり、戦後の混乱を生き、ゼロから這い上がった世代。もはや怖いものはないのだろう。 今ごろは草葉の陰で三人が酒盛りをしているところだろう。
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