【トマトに水やったらおこられた】
最近、スーパーのトマトコーナーはミニトマトが席巻している。しかも、形や色もバラエティー。玉のトマトは追いやられている。ブイヤベースはホールトマトに生トマトを合わせると風味が格段に良くなるから欠かせない。
トマトといえばいつもこのことを思い出す。隣の空き地、今は豆茶がいっぱい生えているとこ。ここはもう20年以上もなるが、カドブンのおばあちゃんが畑にしていた。
カドブンというのは屋号のこと。ここは、というか古い集落は同じ苗字が多いから屋号で呼ぶことが多い。カドブンというのは角屋ブンシチさんだったかな。イニシャルでカドブンさん。このカドブンのおばあちゃんがウチの庭に隣接したところでトマトを植えていた。
お盆も近いある日、古井戸の水を交換してやろうと思い揚水ポンプを回した。水を溝にすてるよりも、暑い盛りなのでおばあちゃんの畑にホースを向けてやった。するとおばあちゃんが血相を変えてでて来て、僕に向かって大きな声でおらんだ。
「トマトに水をやらーでええんよ。実が割れるんじゃが」
漁家育ちの僕にとって、畑のことはなんのことやら。慌てて水を止めたことがある。
ありゃ、なんの話じゃ。