今も時折思い出す。あの日はまだ明けやらぬ朝の6時ころだった。朝ごはんの支度中に電話が鳴り、「もしや」と思った。電話の相手は同級生の陽ちゃんだった。はやり…。特養の管理者でもあった満井くんからは、父が病院に運ばれたと言う知らせだった。かけつけると陽ちゃんが迎えてくれた。父はすでに息を引き取り、死因の検査中だった。診察室に呼ばれ、父と対面した。穏やかな顔だった。
「どこも悪くなかったです。老衰です」
苦しまずに逝ったのか。本当に良かったと思った。
病院を去るとき、主治医と看護師が僕の姿を見えなくなるまで見送ってくださった。
去年が三回忌だった。もう三回忌かと思ったが、3年経つとまだ三年しか経ってないのか。時の感覚は不思議なものだ。
今、どうしてるだろう。相変わらず喧嘩して、頭の上を皿が飛び交っているだろうか。いや、その必要はないか。あの世に行けば、頭の上にはいつも皿が浮かんでいるだろうから。