
「竹林の守人(もりびと)テル」
第14話「風を継ぐ者たち」
風が海を撫で、空に雲を運んでゆく――。
ゆうたちが「竹の里」へと戻った日、島には静かで優しい風が吹いていた。竹林には新しい笹の葉が芽吹き、鳥たちはその上を舞い、春の訪れを告げていた。
「おかえり、守人たちよ――」
そう語りかけてきたのは、竹の根元から現れた精霊・ミハシラだった。ゆうの手には、火の谷で静められた浄火の灯の結晶が、ほのかに橙色に輝いている。
ミハシラ「あなたたちは、それぞれの“声”を聞き、風、水、炎の願いに触れました。そして、失われた“調和”を取り戻しつつある。」
ナミが前へ進み出る。
ナミ「でも、まだ“終わり”じゃない。わたしたちには……伝えるべきことがある。」
その言葉にうなずくように、アヤとテルも姿を現した。
アヤ「風の神子が目覚めた今、この島の守りは再び、若き者たちの手に託されます。私は風の巫女として、あなたたちの後ろに立ちましょう。」
テル(にやりと笑って)「わしもまだくたばっとらん。竹を割る音のように、まっすぐ進め、ゆう。」
そのとき、ゆうはそっと竹笛を口に運んだ。
風、水、火、それぞれの章で出会った音が、静かに一つへと重なっていく。
笛の音が風に乗って広がると、竹林の奥、海の彼方、谷の底からも、響き合うように自然の音が返ってきた。風鈴のような音、水面を打つ雫の音、火のきらめきが奏でる拍子。
それはまるで、島全体がひとつの楽器になったかのようだった。
アヤ「――この調べを忘れないで。世界は言葉を持たないけれど、心で語りかけてくるわ。」
そして、空を見上げるナミが、ぽつりとつぶやく。
ナミ「風は……つながってるんだね。遠くの山や、大きな海とも。」
ゆう「うん。ぼくたちは、まだ小さな風かもしれない。でも、この風は、きっとどこまでも届くよ。」
そのとき、ふいに竹林の中から、子どもたちの声が響いた。
「ゆう兄ー! ナミ姉ー!」
島の子どもたちが、手作りの風車を手に駆け寄ってきた。彼らの小さな手の中でも、風がそっと回っていた。
ゆうはその風車を受け取り、空にかざした。
「さあ――新しい風を、吹かせよう。」
島の空は、まばゆいほどの光に包まれていた。
物語は、終わりではなく、新しい「風」の始まりへと続いていく。
<最終話「竹の海、風の記憶」>
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