鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

連載「ゆうたの夏」 第6話「洞窟の秘密基地」

連載ゆうたの夏

6洞窟の秘密基地

こっちだゆうた遅れるなよ!」

先頭を走る航太の背中を追ってゆうたは小道を駆けていたさくらが時折振り返り笑顔で励ましてくれる

大丈夫転ばないでよー!」

島の北側入り組んだ岩場を抜けた先にそれはあった

ここが俺たちの秘密基地!」

目の前に現れたのは海に面した洞窟外からは見えにくいが潮が引いたときだけ姿を現す天然の空間だった奥には乾いた岩場が広がり木の板や流木で作られた簡単なベンチや棚が並んでいる

すごい……まるで探検家のアジトみたい

ゆうたは目を輝かせた

この前の台風で全部壊れたけど俺とさくらで作り直したんださくら

うんでもまだまだ改造の余地ありってとこだよね

航太とさくらの掛け合いがゆうたには少し羨ましかった二人の間にある歴史のようなものでもそこに自分も加われたら──そんな気持ちが芽生えていた

洞窟の奥にはこっそり置かれたお菓子の缶や手作りの旗航太が書いた二人の秘密基地の文字があった

今日からゆうたも仲間じゃだから名前も入れろ!」

航太がマジックを差し出すゆうたは一瞬戸惑いながらも真っ白な木の板に自分の名前を大きく書いた

これで本当に僕もここの一員なんだね

当たり前だよ仲間でしょ

さくらの言葉に胸が温かくなった

そのとき外から海風が吹き込んできた潮の匂いとともにどこか遠くを旅してきたような風

すると突然ゴーっと大きな音がしたいや音というよりも声のような地響き

ウワッ今のナニ?」

とゆうたが声をあげると航太が

あれはなこの洞窟の奥に住んどる海坊主の声じゃ

驚いたゆうたは

バケモノがいるの

するとさくらが

もう航太ったらやめなさいってばゆうたくんあれね洞窟の奥が海とつながってるの潮が押し寄せるとあんな風に音がするのよでも危ないから奥には絶対行っちゃダメ

航太そろそろ潮が満ちてくる帰るぞ

洞窟をあとにしながらゆうたは何度もふり返った岩の陰にひっそりと隠れたあの場所はただの洞窟じゃない初めて仲間と心を通わせた大切な場所になったのだった

海風が吹くたびにあの時の風景が蘇るようなそんな予感がした

次回第7「「海に消えた出口

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