鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

連載「ゆうたの夏」 第15話「再び秘密基地へ・洞窟は海賊のすみかだった」

 

 

連載「ゆうたの夏」
第15話「再び秘密基地へ・洞窟は海賊のすみかだった」

朝の光がまだ涼しさを残している時間、ゆうたは航太とさくらと合流した。今日はあの洞窟に、もう一度行ってみようという話になっていた。

「父ちゃんに聞いたんだ」と、航太が自慢げに言った。「あの洞窟、昔は人が住んでたって、じいちゃんが言ってたらしい。危ない場所じゃないけど、潮の音が大きい時は気をつけろってさ」

「海坊主じゃなかったの?」と、さくらが笑う。

「そ、そんなの、迷信だよ…たぶん」と、ゆうたが苦笑する。

3人は慎重に、再び洞窟へ向かった。潮が引いているタイミングを見計らい、入り口から奥へと進むと、先日は気づかなかった広い空間に出た。天井は高く、岩肌には削られたような跡があり、棚のような段差もあった。どこか人の暮らしの痕跡を感じさせる。

「ここ、本当に誰か住んでたのかな」と、ゆうたが小さくつぶやいた。

その時だった。すぐ近くの入江から「ゴゴゴゴオーーーッ!」という、腹の底に響くような音がした。

「な、なんだ今の音!?」とさくらが身をすくめる。

3人は洞窟の先まで行ってのぞき込んだ。見ると、波が大きな吸い込み口に引き込まれるように、猛烈な勢いで押し寄せ、そして一気にサーッと引いていった。

「うわ……落ちたら絶対助からんやつだ」と、航太が真顔になる。

「これがあの音の正体か。海坊主じゃなくて、潮の流れのせいだったんだね」と、ゆうた。

「でも、知れてよかったね。近づくなって言われた理由が分かった」と、さくらも納得する。

危険を感じた3人は、洞窟の探索を切り上げ、秘密基地へ戻ることにした。

***

秘密基地では、まず壊れかけた机や椅子の修理に取りかかることに。航太が木を切り出し、さくらが釘を探し、ゆうたが板を持ってきて、三人で協力して作業した。

「できたー!」と、さくらが笑う。

「さあ、秘密の作戦会議だ!」と、航太が机に手をつく。

「作戦会議? なにそれ」とさくらが首をかしげると、

「明日、何して遊ぶかっていう、重大な問題だ!」と航太が真剣な顔。

「アハハ、それ大事すぎ~!」と、三人で声をあげて笑った。

その後、ゆうたが言った。

「ねえ、きょうはおじいちゃんが家にいるから、洞窟のこと聞いてみようよ」

3人は洞窟を後にして、ゆうたの祖父のもとへ向かった。祖父は縁側に腰を下ろし、風鈴の音を聞きながら冷たい麦茶を飲んでいた。

***

「あのね、おじいちゃん。洞窟の奥に、人が住んでたみたいなあとがあったんだけど、知ってる?」

祖父は少し驚いた顔をしたが、すぐに目を細めて言った。

「おお、あそこか。ワシも父親から聞いたことがある。昔はのう、あそこに海賊が住んでおったそうじゃ」

「海賊って、漫画に出てくる乱暴者たち?」と航太が目を輝かせる。

祖父は首を横に振りながら語り出した。

「たしかに、昔の海賊はの、山賊と同じで通る人を襲っては物を奪っていた。しかしそれではまずいと幕府が取り締まりを始めてのう。それから海賊たちは、航海の安全を守る“海の番人”になったそうじゃ」

「それって……海の警察みたいだね!」と、さくら。

「その通り。江戸時代の参勤交代では、各地の殿様が江戸へ向かうために瀬戸内海を舟で通った。そのときの警護をしたのが村上海賊、日本で一番強かったそうじゃ」

「じゃあ、あの洞窟も?」とさくら。

「うむ、配下の者が住んでいたのかもしれん。ワシのじいさんも、舟を漕ぐために駆り出されたと聞いた。一万人もの人が船で渡ったこともあるそうじゃ」

「えーっ、一万人!?」と3人は顔を見合わせて目を丸くした。

夕日が西の空を染めるころ。

「そろそろ夕飯の支度をするか」と祖父が立ち上がると、航太とさくらは家路についた。

帰り道、二人は並んで歩きながらぽつりぽつりと話した。

「ねえ航太、ゆうたくんが来てから、なんか楽しいね。この夏休み」

「ああ、いい弟分ができたよな」

「だから、私はお姉ちゃん! べー!」とさくらが笑う。

「なんだとー! オレが兄貴だぞー!」と航太が追いかけ、さくらがキャーと逃げる。

その後ろ姿を、夕日がやさしく照らしていた。

今日も、楽しい一日が終わっていった。
<第16話「陸と空の攻防・航太んちの家業で干物づくり」>
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