トランプ大統領がコロナで緊急入院の話を聞いて、過去のお泊りのお客さんのことを思い出した。
親子5人、小学生と幼児の子どもたち。料理を出し終わり一緒に呑んでいたら、女の子の具合が変だという。腹がひどく痒いというので母親がシャツをめくると発疹。どうやら蕁麻疹のようだ。ひどくなるといけないので病院に相談してみますか? と聞くと
母「家に連れて帰ります」
父「これから広島へ帰ってどうする。医者に見せよう」
母「いいえ、帰ってあの光を充てて水を飲ませる」
父「はあ? バカをいうな。松本さん、医者に電話できますか?」
そして僕は川口医院へ電話して症状を伝えた
「すぐに来なさい」
両親も僕も一緒に呑んでいたのでタクシーを呼んだ。まだ小さい子がいたので父親が娘を連れて行った。そのあとも母親は「あの光を 水を」と繰り返した。僕はその光と水の正体が想像できたので黙っていた。
そして父親が帰ってきた。ウチワエビによるアレルギーだとわかった。原因が分かったし、娘の症状も落ち着いたので母親も安心したようだ。
あれから10年以上も経とうか。先日ひょっこり息子が訪ねてきた。
息子「あの、僕のこと覚えていますか?」
鯛「よく覚えていますよ。妹さんが蕁麻疹になりましたよね。ご両親はお元気ですか」
息子「いえ、両方とも亡くなりました。これ彼女です。結婚するんで懐かしいところを訪ねました。また家族できますね」
確かこの子が小学6年生の頃だと思う。当時12歳だとしたら今は22歳。両親ともまだ50代だろうに。
30年以上も宿を続けていると、現在の出来事が過去と重なって記憶が蘇ってくる。我々は時間という縦軸と、空間という横軸の中で生きている。古い過去も時空を飛び越えてワープすることがある。長く続けることの面白さでもある。