鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

ゴボウ虐待事件

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【ゴボウ虐待事件】

いつも食べに行く平生町のうどんの釜屋。いつもごぼう天を注文する。このゴボウは、ウチの食卓で食べるゴボウとちょっと違う。味が格段にうまい。かみつぶしたときにジワっと出てくる灰汁っぽい渋みが好きだ。

産地はどこだろう。山口県では美祢市美東町の美東ごぼうが有名だけど。カルスト台地石灰岩が長い年月の間にとけ出し酸化したもので、炭酸カルシウムを含む強い粘土質が味のいいゴボウをつくりだしているそうだ。

ゴボウを食べるときいつも思い出すのが上坂冬子著「貝になった男」。実際にあった話で直江津捕虜収容所事件という。

太平洋戦争中に現在の新潟県上越市に所在した東京俘虜収容所第四分所においてオーストラリア人捕虜が虐待を受けた事件。戦後、収容所の警備員8名が捕虜虐待を理由にBC級戦犯とされて、横浜軍事法廷にて死刑判決を受けて処刑された。

なにをして虐待と扱われたのか。ゴボウだ。当時捕虜にゴボウを使用した料理を提供したところ、「木の根を食べさせられた」としてこれは虐待であると判定された。殺さなくてもいいだろうに。

上坂冬子さんは、存命であれば右派言論界の頂点にいるだろう。極東軍事裁判の不当性を一貫して主張し続けた人で、「貝になった男」もそれを題材にした作品で映画にもなった。高坂さんを見出した一方の極である鶴見俊輔氏も高く評価していたという。現在の薄っぺらい右派とはまったく相いれないように思う。

話は戻るが、世界でゴボウを食べる国は日本と韓国だけだそうだ。とりわけ日本がたくさん食べる。捕虜への虐待扱いされたゴボウ。食文化の違いを解けばわかりそうなものだが、当時の敗戦国である日本の主張はまったく考慮されなかった。

誤解しないでほしい。戦争に負けたのが悪かったというのではない。戦争とはそういう理不尽なものだということだ。日本もまた、大量の虐殺や人体実験など世界に比類なき虐待を行った国であることを忘れてはいけない。