鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

「竹林の守人(もりびと)テル」第9話「風の神の記憶」

第9話「風の神の記憶」

朝霧に包まれた山の尾根を越え、一行は再び「風の峠」へと戻っていた。 谷の怒りを鎮めたあ​​とも、空はなおざわめき、風は何かを告げようとしていた。

アヤは深く目を閉じ、気付かなかった。

アヤ「この風は……『神の記憶』が、目が覚めてしまっている。」

彼女の言葉に、ゆうとナミ、テルの三人は足を止めた。 峠の中央には、一本の巨大な風の柱が立っ昇っており、その周囲には、鳥のような形をした風の精霊たちが舞っていた。

ナミ(驚いたように)

「ゆう、あれって……風の精?」

ゆう(静かにうなずいて)

「風の神子が呼んでる……そう感じます。」

アヤはゆうに近づき、そっとかけ語りました。

アヤ「ゆう、あなたは『竹の記憶』を継ぐ者。そして、風の神の『鍵』でもあるの。」

テル(眉をひそめ)「風の神子は、はるか昔、『風の災厄』を封じた存在じゃ。だがその魂は、今だ彷彿、完全には眠れるおらん。」

アヤは、手にしていた風の羽根飾りをゆうに手渡した。

アヤ「これは、かつて風の神子が持っていたもの。その記憶に触れれば、あなたの中に残る“風の記憶”も、目覚めるでしょう。」

羽根飾りを手にした瞬間、ゆうの意識は風に溶けた。

一面の空。終わりのない風の海。そこに一人の少女が立っていた。淡い銀色の髪、透明な瞳。風の神子――その姿は、どこかアヤに似ていた。

風ノ神子(心の声)
「――あなたが、わたしを呼んだの?」

ゆう(意識の中)
「……うん。僕は“守人”だけど、記憶の記憶も、どこか君に感じてる。」

風ノ神子は微笑んだ。

風ノ神子「かつて、わたしは風と共に生き、風に祈りを捧げた。でも、風は時には、災いを運ぶ。人々に恐れられ、わたしは“封じられた”。」

ゆう「……それは、君のせいじゃない。」

風ノ神子の周りに、風の精霊たちがいて、鳴き声紡ぎ始めます。

風ノ神子「今、また風が乱れているようです。あなたが鍵なら……わたしとともに、風の聞こえてて。」

現実の世界に戻ったゆうは、風の羽根飾りを空に決め、笛を吹いていた。

それは風ノ神の旋律、彼女がかつて歌った祈りの調べ。風が静かに収まり、柱はゆっくりと消えていた。

アヤ(涙を止めて)
「……ありがとう。あの子も、ようやく眠れるわ。」

テル(微笑みながら)
「いや、眠かったんじゃない。風の中で、生きてるんじゃ。」

ナミ(ゆうに寄り添って)
「……ゆう、すごいよ。」

ゆうは静かに聞こえました。

そして空には、まるで祝福のように、七色の帯がかかっていました。

このとき、みんなはまだ知らなかった。
次なる試練――「闇の森」の目覚めが、静かに近づいていることを。

<次回予告第10話「月下の盟(めい)」>