鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

イザベラ・バードの旅「日本奥地紀行」を読む」宮本常一

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イザベラバードはイギリス人で世界を旅した女性。
1831年に生まれ、
72歳の生涯で通算30年に亙って世界各地への旅を行う。
その紀行文は貴重な記録となっています。
ロッキー山脈、サンドウィッチ島、日本、マレー諸島、
カミュールとチベットペルシャ、韓国、中国等。

日本へは1878年明治11年)47歳のときに6月から9月にかけて、
東北 北海道を旅行し、
この時の記録を1880年10月に「日本奥地紀行」(原題「日本の未踏の土地」)(2巻)として出版しています。
イザベラ・バードの旅『日本奥地紀行』を読む」は、
宮本常一がバードの記録を題材に、
観光文化研究所で講義を行った内容をまとめたものです。

宮本常一先生の本を読む会」テキストとして今回選んだものです。

話は少しズレますが、
僕は韓国ドラマが大好きで、
特に宮廷ドラマをよく観ます。
高麗、李氏朝鮮王朝時代を舞台にしたドラマに登場する両班(やんばん)。
字幕には「貴族を中心とする特権階級」と出ます。
両班が民を奴隷のように扱う場面が描かれます。

イザベラ・バードの「朝鮮紀行」にもこの両班のことが書かれています。
外国旅行者からみて書かれた貴重な記録でしょう。

「朝鮮の災いのもとのひとつに、この両班つまり貴族という特権階級の存在がある。両班はみずからの生活のために働いてはならないものの、身内に生活を支えてもらうのは恥じとはならず、妻がこっそりよその縫い物や洗濯をして生活を支えている場合も少なくない。両班は自分では何も持たない。自分のキセルですらである。両班の学生は書斎から学校へ行くのに自分の本すら持たない。慣例上、この階級に属する者は旅行をするとき、大勢のお供をかき集められるだけかき集め引き連れていくことになっている。本人は従僕に引かせた馬に乗るのであるが、伝統上、両班に求められるのは究極の無能さ加減である。従者たちは近くの住民を脅して、飼っている鶏や卵を奪い、金を払わない。」
「当時はひとつの道に44人の地方行政官がおり、そのそれぞれに平均400人の部下がついていた。部下の仕事はもっぱら警察と税の取り立てで、その食事代だけをとってみても、ひとり月に2ドル、年に総額で39万2,400ドルかかる。総員1万7,600人のこの大集団は『生活給』をもらわず、究極的にくいものにされる以外なんの権利も特典もない農民から独自に『搾取』するのである。」

僕が生まれたのは1956年(昭和31年)。
戦争が終わって僅か10年しか経っていない時代、
幼い記憶にもまだ軍服姿の大人の記憶があります。
この両班(ヤンバン)という言葉が日常的に使われていました。

「あそこの家は両班じゃ」。

子どもには金持ちの家と理解していました。
さすがに奴隷のように扱われりことはありませんでしたが。
植民地としていた朝鮮半島から、
戦後引き揚げた人が多かったから、
その言葉も持ち帰ったのでしょう。

さて、この本、読み始めたばかりです。
宮本常一先生が読み解くイザベラ・バードの世界。
旅したいと思います。