【敗因はフンドシだった】
僕よりも一回り上の人の話が面白かった。
当時、沖家室中学はバレーが強かったそうだ。その試合が小松で行われることになった。小松とは大島大橋が架かっている地区。沖家室島とは両端に位置する。
「朝早う暗いうちに舟に乗せてもろうて佐連へ着き、それから歩くんよ。ワラジでの。着いたときは昼をまわっちょった。はあヘトヘト」
「食べ物は?」
「梅干しが入ったにぎりめしよ。力は出やーせんがいね」
「ユニフォームは?」
「下着のシャツにショーパンよ。他の生徒をみるとズックを履いちょる。ワシらはワラジよ。恥ずかしかったいね」
「それで試合は? 沖中は強かったんじゃろ」
「強かったんじゃが、負けたんよ。試合中にみんなマタクラに気をとられての。フンドシの端がパンツからのぞくんじゃ。そのたんびに中にたくし上げる。女子も観よるのに恥ずかしゅうて、そればっかり気になって試合に身が入らんかった」
正確な年は聞かなかったが、たぶん80歳前後だと思う。