鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

寒風の中の釣り 民泊体験

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「寒風の中の釣り」
民泊初日。
朝9時に大観荘へお迎えに。
神奈川県藤沢市からの中学生。
本来は秋に来る予定だったが、
ドイツの貨物船の橋への衝突事故で日程変更をして来た生徒たち。

多くの学校が旅行先を変更した中で、
あえて日程変更してまで周防大島を選んでくれた。
それだけでも嬉しい。

さっそく顔を会わせる。
みんないい笑顔だ。
あいさつもひとりひとりきちんとして、
すがすがしい。
民泊を初めてもう10年近くなるかなあ。
この学校は毎年受けてきたが、
とりわけいい生徒たちばかり。

我が家に着いてさっそく釣り。
よりによって北の向かい風。
糸が煽られるし、
なんといってもガタガタ震えるほどの寒さ。
餌をつける手もかじかむ。
それに加えて長潮
潮がさっぱり動かない。
魚は見えども知らんぷり。
文学者内村鑑三の有名な言葉
「死魚は流れのままに流されるが、活魚は流れに逆らって泳ぐ」のごとく、
潮が動かないと採餌本能は働かないのだ。
午前中はたったの3匹!(××)!。

昼食をとって気分を取り直して午後にトライと思いきや、
風はますます強くなり、
釣りは明日に持ち越して観光に。
道の駅でお土産を買い、
なぎさ水族館で遊び、
戦艦陸奥の引き上げ品を見学して帰宅。

晩ご飯の支度をしていると、

「松本さん、頭が痛くてとても寒いです」

と、奮えるか細い声。熱を測る7度6分。

「ありゃりゃ、こりゃしんどいねえ。ストーブの前に横になっちょきなさい」

役場の担当に電話。

「担当の先生と相談しますから、様子をみていてください」

しばらくして熱を測ると今度は8度6分。
再び担当から電話があり、
そのことを告げると病院に連れて行くことに。
しばらくすると担当課長が到着。
みんなで見送った。

ひとり抜けた食卓は少しさびしかった。
みんな心配なのだろう。
1時間ほどすると電話。

「インフルエンザではありませんでした。今夜は本部宿にて休みます。明日の朝の様子を観て、これからの判断をいたします」

そのことを生徒たちに告げると、
アー良かったと少し安堵した様子。

翌朝、少しは凪いだ。
さあ、きのうのリベンジだ。
これではおかずが乏しいとはっぱをかける。
ところが潮はさっぱり動かず。

昼前に引き上げようとすると役場の車から先生に連れられて、
病院に行った生徒が降りてきた。

「生徒がご心配をおかけしました。熱も下がり、体調も回復してきました。よろしくお願いします」

「それは良かったです。でも寒い中の釣りは無理ですかね!(^^)?」

すると先生が

「いえ、このこは釣りが好きなのです。ムリのようなら本人が言いますので、釣らせてやってください」

本人の顔をみると首を縦に小刻みに振って「大丈夫です」と。

「では、様子を観ながら午後も釣りをしますが、無理はさせませんので」

部屋に入るととたんに大騒ぎ。
みんな良かったね。

午後、フルメンバーでふたたび波止へ。
ところがアタリは散発。
午後3時前になるとひとりの生徒が「松本さん、温泉いきたい」と。
冷えた体をあっためるのもいいか。
みんなもそれがいいと。
そして遊湯ランドへ。
僕はその間に買い物。

風呂からあがったと電話があり、
迎えに行くとみんなきれいに茹であがっていた!(^^)!。

晩ご飯は、
きのう釣ったギザミと小メバルを合わせてもたったの9匹。
しかもほとんどはひとりの生徒が釣り上げたもの。
それはから揚げにして、
その彼に感謝していただきまーす。
他にはタコのオイル漬けとかから揚げとか、
にしてもちょいとショボイ!(××)!。

二日目の晩にみんなそろって嬉しかったのか、
遅くまでおしゃべりをしていたようだ。
こちらもそろそろ休もうかと思ったらひとりの生徒が部屋に入ってきた。

「あの、松本さん、ミスチルを聴いていいですか!(^^)?」

そうだった。
自己紹介カードにミスチルファンと書いてあった。
さっそく音響の配線をセットした。
重低音にびっくりしたようで2階からみんな降りてきて、
部屋はライブ会場と化した。

3日目の朝、
9時に集合なので朝食は7時半。
みんな揃った顔は眠そうだった。
体調を崩した生徒も顔色はよくてホッとした。

会場へ向かう途中、
片添えが浜で記念撮影。
ダッシュ島をバックにと思ったがアリャ、
ガスがかかってみえない!(××)!。

離村式会場に着くと、
口々に「寒かったのう。魚は食やせん」。
どこも同じだったようだが、
生徒たちの顔はみんな明るかった。
挨拶にたった女子生徒は涙ながらに
「この体験はこれからの学習に役立てます」と述べ、
大きな拍手に包まれた。

お別れ会も終了し、
受け入れ家庭のみんなが会場を出ようとしたとき、
「松本さーん」と大きな声が聞こえた。
振り返ると体調を崩した生徒だった。
他のみんなも手をしきりに振っていた。
こちらも返した。
「4人そろって良かったね」と心でつぶやいた。