【読書日記】③
ー吉田松陰と日本近代―
ぺーリー来航から日本の外交は、外的自己と内的自己が分裂してしまう。その葛藤はいずれ爆発すると筆者は解いた。松蔭の憂国の情と行動は、その内なる日本のアイデンティティーを立て直すことだった。
「日本が欧米諸国の圧迫と威嚇を受けて存亡の危機に立たされ、おのれの安全を保つために歴史上初めて外国への迎合と屈従のために傷つけられた民族のための誇りを回復しようと必死にあがいた時代であった」
「松蔭の憂国の情、幕府批判は、まさにこのような内的自己の屈従する外的自己に対する批判である」
松蔭は最後、安政の大獄に連座し老中暗殺計画を自ら進んで告白し死罪となるのである。精神科医である筆者は、ペリー来航から松下村塾の開塾、そして決起に至るまでその行動から次のように診断している。
「松蔭の思想と行動は、現実感覚の不全、それに由来する主観主義、精神主義、非合理主義、自己中心性の典型的な例である」
これだけを読むと松蔭を崇拝する人にとっては穏やかではないだろう。いやはや、僕のような半端な知識で触れるとヤケドしかねないので、この辺にしておく。
興味あるかたは、ご一読を。しかし、この本はヤケドする。