鯛の里日記

周防大島町沖家室島の民泊体験施設・居酒屋の日常と、宮本民俗学の学びを書きます。

トマトに水やったらおこられた

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【トマトに水やったらおこられた】

最近、スーパーのトマトコーナーはミニトマトが席巻している。しかも、形や色もバラエティー。玉のトマトは追いやられている。ブイヤベースはホールトマトに生トマトを合わせると風味が格段に良くなるから欠かせない。

トマトといえばいつもこのことを思い出す。隣の空き地、今は豆茶がいっぱい生えているとこ。ここはもう20年以上もなるが、カドブンのおばあちゃんが畑にしていた。

カドブンというのは屋号のこと。ここは、というか古い集落は同じ苗字が多いから屋号で呼ぶことが多い。カドブンというのは角屋ブンシチさんだったかな。イニシャルでカドブンさん。このカドブンのおばあちゃんがウチの庭に隣接したところでトマトを植えていた。

お盆も近いある日、古井戸の水を交換してやろうと思い揚水ポンプを回した。水を溝にすてるよりも、暑い盛りなのでおばあちゃんの畑にホースを向けてやった。するとおばあちゃんが血相を変えてでて来て、僕に向かって大きな声でおらんだ。

「トマトに水をやらーでええんよ。実が割れるんじゃが」

漁家育ちの僕にとって、畑のことはなんのことやら。慌てて水を止めたことがある。

ありゃ、なんの話じゃ。

巨大なイカナゴの正体

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ずいぶん前になるが、なじみの魚屋で見慣れない魚がいた。サンマとも違うし、これなに? って聞くと、イカナゴだという。30センチ近くある。な~に~? 普通に見るイカナゴって10センチくらいじゃがね。北海道産だという。

調べてみると、北海道だけに生息するキタイカナゴなんだそうだ。でも小さい方が値段が高く、大きくなるほど安くなるという。しかも刺身でも食べられるんだそうだけど、あまりたくさん食べるとお腹を壊すから要注意だと。なにそれ。

瀬戸内海のイカナゴは小さなエリアで回遊するので、夏になれば砂に潜って夏眠し水温が下がれば回遊し始めるそうだ。だから今は夏眠の真っ最中。僕が小学生のころは潮が引くと裸足で入ったら足裏がゴニョゴニョ動いた。イカナゴってわかってたから驚きもしないけど、面白かった。今も天然の浜があったら、裸足で歩くと案外いるかもね。

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死んだふりする烏賊

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【烏賊の由来】

先日、峠越えをしていたらなにやら黒い生き物が前を横切った。子猫か、いや鼻が長かった。像か、まさか…。ドライブレコーダーを確認したら、ウリ坊だった。やれやれ。そんな話をしたら、宮崎に住む友人が山道にウリ坊が転がっていたので引き返したらいなかったという。誰かが先に持って行ったに違いない、丸焼きにしそびれたと悔しがっていた。(;゚;ж;゚; )ブッ. 恐ろしいことを考えるもんだ。

そしたら小さいころの記憶が蘇ってきた。

島の裏でテンマ舟を漕いでいた。すると潮に乗った甲イカがプカっと浮いていた。まだ新しいようなのですくってやろうと思い引き返した。というのも、過去に父と乗っていたときに同じように甲イカが浮いていて、「お、コリャ持って帰ろう」とすくったことがあった。「大丈夫なん?」と尋ねると、「コブイカは産卵したら死ぬんじゃ。そしたら浮くんじゃ。これはまだ新しいから刺身は無理じゃが煮付けにしたらよかろう。ただし、単に浮いて甲羅干しをしとる場合もある」。そんな記憶があった。

ところが、戻ってみると消えていた。遅かったか。日向ぼっこで潜ってしまったか、トンビかカラスが咥えてさらっていったか。あ~悔しい。

ところでイカを漢字で書くと烏賊と書く。鳥ではなくて烏。横の一本線がないのがカラス。カラスに盗賊の賊。イカは死んだふりをして、浮かんでいるとカラスがやってきて引き込むという意味。カラスが襲うのではなくて、イカが襲うのだ。由来は中国という。

宮崎のウリ坊は死んだふりをしてたのかもよ。Ψ(`▽´)Ψウケケ

歴史に幕 宮島水中花火大会

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28日付中国新聞は見開き1面で、1973年から続いた宮島花火大会が歴史に幕を閉じたと伝えた。紙面のQRコードスマホをかざすと、紙面をバックに花火の映像が流れる趣向を凝らした。今や、こんなことまで出来るのかとビックリした。

広島に勤めたのが18歳で1974年。勤め先が宮島の対岸の大野町だった。僕が初めて見たのは宮島花火が始まって2年目にあたる。会社が終わり、フェリーに乗って観に行った。当時は海面で炸裂する水中花火はなくて打ち上げのみだった。ほぼ真上で空いっぱいに拡がる花火をみたのはこれが初めてだった。当時はそれほど人も多くはなかった。

30歳のときにケガをして数年ほど療養したのをのぞいては、たびたび周防大島から宮島に渡った。海面で炸裂する水中花火が始まったのはいつころかわからないが、規模が大きくなり国内有数の花火大会になるに従って人も増えた。鳥居のある前浜あたりが最高のポイント。それはもう通行するのさえ立錐の余地もなかった。5万人とは驚く。

僕は島に渡るといつも裏道を通り、神社の裏をまわって水族館まで行ってみていた。鳥居を真横にみることになるが、台船には近くて人も少なかった。

最後に観たのは2016年。これが最後になろうとは思わなかった。

YouTubeに2019年の花火の映像がアップされていた。撮った本人もこれが最後になろうとは思いもしなかっただろう。この年は珍しく鳥居まで潮が引いていた。潮干狩りのできるポイントでもある。浜に降りて花火が観られるのはとても珍しいし、台船までの距離も近い。大変にラッキーだっただろう。ひとつ残念なのは、鳥居の屋根をふき替える工事のために幕が張られていたことだ。

開催の主体は宮島観光協会である。世界遺産とはいえ、小さな宮島町の負担は大きかったはず。長く楽しませてくれて、ありがとうございました。

口裂け女の話

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口裂け女の話】

先日の大雨は夕方になると、いっそう激しさを増した。うす暗くなった六条のバス停に人が立っていた。ずぶ濡れの髪の長い女性が海をみつめていた。バスを待つ間に傘がなくて困っているのだろう。僕はそう思い、傘を貸してあげようと車を止めた。

「寒いでしょう。どうぞ傘をお使いくださーい」

その女性がふりむいて驚いた。真っ赤な口が耳まで裂けてケケケと笑った。うわ~、僕は怖くなってその場を急いで離れた。

そして獅子ヶ首のあたりに来たら、雨の中を傘もささずに人が歩いていた。こりゃたいへんだと思い車に載せてあげた。

「今しがた、怖い思いをしたんですよ。バス停で待っている人に声をかけたらその人の顔…」

すると載せた人がこちらを向いた

「こんな顔でしたか」

※「日本の幽霊」の著者 池田彌三郎氏によると、この手の怪談は夏の定番らしい。そのときに、誰かが他人のほっぺたを後ろからそっとナデると効果的だと。多いのはノッペラボウ。

「日本の幽霊」池田彌三郎著

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池田彌三郎(やさぶろう)著「日本の幽霊」

どうせオカルトもんじゃろうと言うなかれ。この池田彌三郎さんは有名な民俗学者です。日本の民俗学の草分けである折口信夫さんに師事し、宮本常一先生とは「民俗学のすすめ」の共著者でもあります。

池田さんが日本に伝わる幽霊話を読み説きます。民俗学はありのままに記録することが基本です。だからその話が作り話であろうとありのままに聞き取ります。恐山でイタコの話に「婆さん、アンタそれウソじゃろー」とか言ってはシャレにもなりません。

昔の幽霊だけではありません。最近の幽霊もあります。例えば、震災後にタクシーに乗った女性が指定されたところに着いたらい消えていた。とか、家まで載せて行ってお金をとってくるというので待っていても来ない。家を訪ねると数日前に亡くなっていた。

こういう幽霊話は世界中にあるそうですよ。

さあ、あなたは幽霊を信じますか? ほら、後ろにいますよ。

 

 

マブタのイナズマ

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【マブタのイナズマ】

左目がかゆくなり目の淵をカリカリと掻いてやった。ついでに目のまわりを引っぱったり回したりしてマッサージ。

すると目の前に雲のようなモヤが浮かんでそこだけボケる。それから数分すると、今度は目の端にイナズマのような光が出てきた。目をつむると鮮やかに光る。こりゃえらいこっちゃ、目ん玉に雷が落ちたか。ネットで調べると、加齢と共に網膜の異常でよく起こるらしい。放っとても治るが、治らない場合は網膜剥離脳梗塞の可能性があり要診断とのこと。

おいおい穏やかじゃない。しばらくじっとしていると10分後には何事もなかったように収まった。あ~良かった。

10年前には右目の手術をした。翼状片(よくじょうへん)といって、目の白い部分が異常増殖をして黒目に覆いかぶさるという病気。欲情の病ではない。

手術は、黒目にかぶさった白目をメスで削っていく。術中は、眼球を風船に例えると散髪の実習で髭を剃る感じ。キュッツキュと音がする。麻酔をかけているので痛みはないが、目は見えたまま。

目の淵にワッペンのようなものを貼り瞼を固定する。「麻酔をかけますからねー」と言われ、点眼液を数的落とした。しばらくすると感覚がなくなった。「目を洗いますからねー」と言われ、指を目に突っ込んでグリグリひっかきまわす。頭がクラクラした。これには参った。

術後は雲が晴れたようにスッキリと見えるようになった。おまけに見えてはいけないものまで見えるようになった。

もし僕がある一点をジーっとみていたら、それはアナタの知らない世界です。(;゚;ж;゚; )ブッ.